今回ご紹介するのは、京都市左京区・岩倉(いわくら)にあるお寺・・・
実相院(じっそういん)です
この岩倉という地は
神様の宿る巨大な岩『いわくら』があった事から
付いた名前です。
※ちなみに『いわくら』には、昔から様々な漢字(磐座・石位など)があてられています。近くにある石座神社(いわくらじんじゃ)も字は違いますが、この『いわくら』を指しているんですよ。
そんな岩倉に建つ『実相院』は
かつて岩倉門跡(いわくらもんぜき)や岩倉御殿(いわくらごてん)と呼ばれていました
四脚門(しきゃくもん・表門)の中に立つこま札。
『門跡』とは門跡寺院の事であり
皇族や摂家が出家するお寺をそう呼んでいたんですね。
実相院はかつて天台宗(てんだいしゅう)の門跡寺院であり
皇族から出家した人物が住職などを務めていたんですよ
※天台宗は平安時代の高僧で、遣唐使でもあった最澄(さいちょう)を祖とする宗派です。天台宗や門跡寺院については天台宗五門跡の記事をご覧下さい。
創建されたのは1229年
鎌倉時代初期の僧・静基(じょうき)によって開山されました。
※本尊は、鎌倉時代作と言われる不動明王(木像)です。
ちなみに創建当初は、岩倉ではなく
京都市北区に位置する紫野(むらさきの)にあったそうです。
※紫野はかつて、染料として使われた紫草が生えていた場所で、狩の場にも使われていた所なんですよ。
その後、戦火を避けるように
一度、京都御所の付近に移動した後、現在の岩倉に建てられたそうです
※この戦火の1つに、応仁の乱(おうにんのらん)が挙げられます。応仁の乱は室町幕府将軍の後継者問題をきっかけにして起こった戦いで、10年もの間、継続的に戦が起こりました。詳しくは銀閣寺(慈照寺)の記事をご覧下さい。
歴代の住職には
足利義昭(あしかがよしあき・室町幕府最後の将軍)の孫『義尊(ぎそん)』や
後西天皇(ごさいてんのう・第111代天皇)の皇子『義延(ぎえん)法親王』
霊元天皇(れいげんてんのう・第112代天皇)の養子『義周(ぎしゅう)法親王』
などがいるんですよ~。
※法親王とは出家した親王(天皇や皇后の次に、皇族男子に与えられる最高の位。)の事を指す称号です
ちなみに、玄関口にもなっているこちらの『御車寄(おくるまよせ)』や
その他、客殿・本堂は
承秋門院(しょうしゅうもんいん・東山天皇の皇后)の旧宮殿を移築したものだそうです。
旧宮殿は大宮御所(皇太后の御所)にあったもので
崩御された事をきっかけに移築されました。
これらの事からも分かる通り
室町時代から江戸時代にかけて、皇室と密接な関係を持つ
門跡寺院であった事が
お分かりいただけると思います。
※移築された当時は、ここで皇族などを招き、茶会などが行なわれていたみたいですよ。
ちなみに、堂内は撮影禁止でしたが
数多くの寺宝などが展示されていましたよっ
襖絵では
狩野永敬(かのうえいけい)による
『花鳥図(かちょうず)』や『群仙図(ぐんせんず)』などを
見る事が出来ます。
※狩野永敬は江戸時代前期の絵師で、京狩野の1人です。狩野派は室町から江戸時代まで画壇の中心的存在の一派でした。『京狩野』とは、江戸時代以降、京都に残った狩野派の絵師を指す言葉です。
この他、作者は不明ですが
狩野派によると思われる襖絵も、多数見る事が出来ます。
襖絵以外には
歴代天皇の尊牌(そんぱい・位牌)などがズラリと並べられていました。
続いてお庭をご紹介します。
実相院には2つのお庭があり、まず最初にご紹介するのが
こちらの池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)です
勢いよく伸びた枝葉が
池を覆い隠すように、ダイナミックに生えてますね~。
※池泉回遊式庭園は、本来池を中心を回りながら楽しむお庭ですが、実相院ではお庭に下りる事は出来ませんでした。
ちなみに実相院は、紅葉の名所としても大変有名で
秋になると多くの方が足を運びます。
お庭ももちろん綺麗なのですが
中でも滝ノ間と呼ばれる部屋から見る事の出来る
『床もみじ』が有名で、庭の紅葉が滝ノ間の床に写り込むというものです
その情景が味わい深く、人気なんですね。
※同様に新緑の時期は『床緑』、冬には雪は写り込む事から『雪化床』と呼ばれています。
お部屋が薄暗くなっているので
外からの強い光で、部屋の床に写り込むんですね。
この事から、正午あたりが一番綺麗に見えるそうですよ。
残念ながら撮影禁止という事で写真はありませんが
現在は『床緑』が楽しめますので
是非、足を運んで実際にご覧になってみてください
続いて、もう1つのお庭『石庭』をご紹介します。
かつては蹴鞠の庭とも言われていたこちらのお庭は
現在、『こころのお庭プロジェクト』と呼ばれるワークショップ形式の庭の改修が行なわれています。
※一般市民も参加して、庭作りが楽しめるというワケです
先日、6月1日に1回目の改修が行なわれ
それまで、白砂と石のみだった庭園に
苔や花が加えられられました。
これは、石を海や雲に見立て
苔で日本列島の島を表現する為のものだそうで
2014年・秋の完成を目指していて
大幅に庭が作り変えられようですっ
このプロジェクトの中心となっているのが
小川勝章さんという作庭家で
なんと!あの無鄰菴の庭や
平安神宮・神苑を手がけた
『7代目・小川治兵衛(おがわじへえ)』の直系にあたる方だそうです。
今後、小川治兵衛を継ぐ、有能な作庭家さんなんでしょうね~。
※平安神宮・神苑に関しては平安神宮 神苑 その1、平安神宮 神苑 その2をご覧下さい。
一般参加も可能な庭作りという事で
今後も定期的に募集されるようなので
こまめに実相院のHPチェックしてみてはいかがでしょうか?
という事で今回は、岩倉にある実相院をご紹介しました。
場所はコチラ↓
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