今回ご紹介するのは

京都府綾部市(あやべし)志賀郷(しがさと)地区にある

篠田神社(しのだじんじゃ)で行われた

筍祭(たけのこまつり)です!


筍祭(たけのこまつり)

筍祭は、毎年2月4日に行われる神事で、本殿裏にある御宝田(おたからでん:御ミノシベ)と呼ばれる篠竹林に生えた筍3本を刈り取って、それを神前にお供えし、その年の稲作の早稲(わせ)・中稲(なかて)晩稲(おくて)の豊凶や、風雨、日柄、水難を占うというものです


御宝田(御ミノシベ)


地元の方からは『お宝祭』

『たけのこさん』とも呼ばれて

大変親しまれているお祭なんですよ~


ちなみに綾部市は、京都府北部の絹織物が有名な市で

志賀郷地区は、その綾部市内の北西部に位置する

人口約1500人が住んでいる所です


そんな志賀郷地区には古くから『志賀の七不思議(しがのななふしぎ)』が伝わっていて、今回ご紹介する筍祭も志賀の七不思議の1つに数えられているんですね~


綾部市史編さん委員会の『綾部市史』

篠田神社の由緒によれば

飛鳥時代(592~710年)、崇峻天皇

(すしゅんてんのう:第32代天皇)の頃

大和朝廷(やまとちょうてい)は

中央の勢力を固めるために金丸親王

(かねまるしんのう:当麻皇子(たいまのみこ)

麻呂子親王(まろこしんのう))を遣わして

丹波(たんば)の国々の地方豪族を征伐させたそうです


金丸親王は、丹波の国々を征伐出来たのは

「これ神仏の御加護のおかげである!」

と、征伐の道中にあった志賀郷の5つの神社である藤波大明神

金宮大明神(現在の阿須々伎神社(あすすきじんじゃ))

若宮大明神、諏訪大明神、白田大明神(現在の篠田神社)を

篤く信仰したんですね


その後、奈良時代に入って

親王の子孫にあたる金里(かねさと)宰相が

親王が五社を篤く信仰していた事を思い出し

五社の大明神に千日参り(せんにちまいり)をして

その記念に藤波大明神には『藤(ふじ)』

金宮大明神には『茗荷(みょうが)』

若宮大明神には『萩(はぎ)』

諏訪大明神には『柿(かき)』

白田大明神には『竹(たけ)』を植えて

国家安泰と子孫繁栄を祈願し、朝廷に報告したそうです


するとあら不思議!この時以来、志賀郷には、とっても不思議(奇瑞(きずい))な事が起こるようになったんですね~


1926年(大正15年)に編集された郡誌

『何鹿郡誌(いかるがし)』には

・正月朔日(元日)、9時頃までに藤波神社に藤の花が咲く

・2日、12時頃、若宮大明神に萩が咲く

・3日、8時頃までに金宮大明神の手洗川に茗荷が上がり、その年の早稲・中稲・晩稲の豊凶、風雨、日柄、水難を示す

・4日、8時頃までに白田大明神のお宝田に筍が上がり、その年の早稲・中稲・晩稲の豊凶、風雨、日柄、水難を示す

・6日、5時に諏訪神社に御用柿が3つ生じる

・10時に向田・鍋倉にある滴松(しずく松)から滴が雨のように落ちて、日柄、水難を示す

・向田・松の下にある揺松(ゆるぎ松)が、都に吉事があれば上の葉が、凶事があれば下の葉が動く

といった事が書かれています

※何鹿郡は、現在の綾部市と福知山市の一部。


これが志賀の七不思議と呼ばれているものなんですけれど、お正月に季節外れのものが、しかも時間まで指定されて起こるなんて不思議ですよね~


けれど残念なのは、現在まで残っている不思議は

「金宮大明神の茗荷」「白田大明神の筍」

2つだけなんですよね~


藤波神社の藤は、1299年(正安元年)の正月朔日

都へ運ぶ使いの者が京都府南丹市(なんたんし)

園部町(そのべちょう)にある水戸峠(観音峠)で

藤の入った竹かごを勝手に開いて中身を見てしまった為に

藤は白鷺となって飛び去ってしまい

それ以降、不思議は消えてしまったそうです


また、御用柿は1312年(正和元年)に

使の者が須知で喉が渇いたのでお茶を飲んだところ

突然お腹が痛くなってしまい、その時

御用柿を入れた竹かごが、そのまま北へと飛び去って

以降、不思議は消えてしまったそうです


滴松と揺松にいたっては、明智光秀(あけちみつひで)が

福知山城(ふくちやまじょう)を築く際に

切ってしまったといいますから、なんとも残念です


それでは、志賀の七不思議についてもご紹介したところで

筍祭をレポートしていきましょう


篠田神社

篠田神社


10時頃に篠田神社の境内に着くと

既に多くの方で賑わっていました


雪の残る篠田神社の境内

雪の残る篠田神社の境内


境内には、数日前に降った雪がまだ残ったままで

普段の半分程しか歩くスペースがなかったんですけれど

籠堂(こもりどう)前と本堂裏にあるお宝田前の

雪の無いスペース2箇所が確保され

そこで焚き火が行われていましたよ~


雪が溶けずにそのまま残っているくらいですから

とっても寒いんです

お祭の関係者や地元の方らが

10時半からの神事を暖を取って待っていたんですね♪


そこで境内をうろうろしていると突然「おめでとうございます!」と声をかけられ、盃(さかずき)に御神酒(おみき)を頂きました


境内では御神酒の他にも甘酒が接待されていて

こちらもバッチリ頂いちゃいましたよ~♪


おかげで体の中がポッカポカです


そして10時半頃になると籠堂から

神職や氏子の方々が次々に出てこられます


まずは、神事の前に身を清める手水の儀(ちょうずのぎ、てみずのぎ)が行われます。


手桶から柄杓(ひしゃく)を使って御神水を取り

左手、右手、左手と交互にかけた後

左手に御神水を溜め、それで口をすすぎます


これは後から知った事なんですけれど、以前は、筍祭を行う前には氏子の方数人が3日間、籠堂に注連縄(しめなわ)を張って籠り、1日に3回、近くを流れる篠田川に裸で入って、水の中で般若心経(はんにゃしんぎょう)一巻を唱え、唱え終わると神前へお参りし、再び般若心経を唱えるという事をしていたそうです


この季節ですから、川の水は冷たいなんてものではなく

危険という事もあってなのか現在は行われていません


さて、手水の儀をした後は

神職や氏子の方達が一列に並んで

拝殿に向かって進みます


拝殿に進む様子

拝殿に進む様子


拝殿に入ると、まずは穢(けが)れを祓(はら)う為に修祓(しゅばつ)を行いますよ


修祓(しゅばつ)

修祓(しゅばつ)


神様をこれからお迎えするのに

穢れがあってはいけませんからね


神様はなんといっても穢れが大変お嫌いですから

事前に祓っておくというわけです


修祓に続いて宮司一拝や御扉開扉等をして、いよいよ本殿裏にあるお宝田に上がった筍を刈り取りに向かいます


お宝田に向かう様子

お宝田に向かう様子


お宝田にはあらかじめ

早稲、中稲、晩稲の筍の位置が

示された札が立てられていましたよ


「わせ」と書かれた札

「わせ」と書かれた札


これは2月4日の0時から神職の方が筍を探し、一番最初に見つかった筍を早稲、次に見つかったものを中稲、そして3番目に見つかったものを晩稲として、そこに札を立てておかれたものなんですね


お宝田の筍を刈るのは、真っ白の装束を身にまとった

禰宜(ねぎ:祢宜)と呼ばれる宮司を補佐する神職2人です。


2人は、お宝田の前でお祓いされ、鎌、ノミ等を持ってお宝田の中に入り、正面の早稲の出来を占う筍を刈り取ります


禰宜2人をお祓いする様子

禰宜2人をお祓いする様子


玉垣の外から作業を見ていると

根のように見える地下茎(ちかけい)を

鎌で切断するのは大変そうで

10分程の時間をかけて筍を刈り取っておられました


お宝田に上がった筍を刈り取る様子

お宝田に上がった筍を刈り取る様子


ちなみに筍の根のように見える部分は、地下茎と呼ばれる茎で、根ではないんですよ~


刈り取られた筍

刈り取られた筍


早稲を示す筍を刈り取ると三方(さんぽう)の上に乗せ

次の中稲を示す筍の場所に移動をします

※三方とは、神様へのお供え物を乗せる台の事。


そこでも同じように筍の周りの土を掘り

地下茎を切断して、筍を刈り取ります。


中稲を示す筍を刈り取る様子

中稲を示す筍を刈り取る様子


そして、最後に晩稲を示す筍の方へ移動をし

こちらも同じように筍を掘り取ります。


晩稲を示す筍を刈り取る様子

晩稲を示す筍を刈り取る様子


こうして早稲、中稲、晩稲を示す

3本の筍を刈り取るとお宝田を後にして

靴や道具についた泥を落とし拝殿の前に移動をします


泥のついた鎌やノミ

泥のついた鎌やノミ


拝殿前には、あらかじめ小宮が用意されていて、そこに刈り取った筍をお供えするんですね


神前にお供えする様子

神前にお供えする様子


ちなみにお宝田で筍を刈り取っている間も

拝殿では神事が止まることなく続けられていて

祝詞(のりと)の奏上(そうじょう)等が行われていました

※祝詞とは、神職の方が神前でお祭の目的や神様に捧げる祈りの言葉を申し述べるものです。


祝詞奏上

祝詞奏上


ちょうど筍をお供えした時には

玉串(たまぐし)を使った拝礼である

玉串奉奠(たまぐしほうてん)が

行われているところでした。


こうして筍祭は無事お納めされたんですね


その後、拝殿前にお供えされた筍を見て

「今年は中稲がいい」「どれもいいね」

といった具合に、いろいろな方々が代わる代わる筍を見て

今年の稲作の豊凶を占っておられました


筍がお供えされた小宮

筍がお供えされた小宮


占いに関して神職の方が何かを言ったりする事はなく、見る人それぞれ独自に占うというものなんですね。


そこで何人かの方にお話を聞きましたら

竹はまっすぐに伸びているのか、色はどうなのか

大きさは、といった事で占っておられるんだそうです。


刈り取られた筍。左から早稲、中稲、晩稲を示す。

刈り取られた筍。左から早稲、中稲、晩稲を示す。


皆さん独自の占い方を持っているようで

筍談義を楽しまれているようでしたよ


ちなみにお宝田の前に立てられたこま札には


筍さんの出る場所
正面東側の奥に上がるのが最上
お宝田の全面より後方に上がるのがよろしい
正面より左側はよくない 戌亥の方角である
高いところに出るのは水害の恐れあり
低いところに出るのは干害の恐れあり

筍さんの姿、形
長くて太いのは多収穫である
短くて細いのは減収の恐れあり
色あいが悪いのは病害虫の恐れあり
曲がっているのは風害の恐れあり
筍の皮が剥がれているのは風害の恐れあり
色が良く 太くて 短いのがよろしい
元のしっかりしているのがよろしい
まっすぐに伸びているのがよろしい


と書かれていました


篠田神社筍占い

篠田神社筍占い


この他、境内には地域の特産品である

七色餅も売られていました~


七色餅

七色餅


と、いう事で今回は

京都市綾部市の志賀郷地区にある

篠田神社の例祭、筍祭をご紹介しました


ご興味のある方は是非来年にでも

筍祭を見に篠田神社を訪れてみて下さいね♪

その時には雪が残っていると思いますので

暖かい格好で行かれる事をおすすめします


筍祭の行われた篠田神社の場所はコチラ↓

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