今回ご紹介するのは、上山神社(うえやまじんじゃ)で行なわれた
筒川祭(つつかわまつり)です
京都府北部・丹後半島の山間部に位置する
伊根町筒川地区にある上山神社の祭で
『菅野の神楽(すがののかぐら)』が奉納される祭りです。
※上山神社の例祭の日にあたる事から、祭神に対し神楽が奉納されるんですね。
京都府の無形民俗文化財にも指定されている菅野の神楽は
現在12の演目が伝承され
中でも『和唐内(わとうない)』と呼ばれる
演目が見どころの1つとなっています
※和唐内については後ほどご説明させていただきます。
では早速、4月28日に行なわれた筒川祭をレポートしたいと思います
神楽を舞う地元の方々が集まる中
10時少し前から、本殿前にて神事が行なわれます。
※筒川祭が行なわれる古社・上山神社に関して、起源などの詳細な資料は残されていませんが、少なくとも室町時代初期には、すでにあったとされています。古くから地元の氏神社として、村の人々から崇敬を受けているようです。
祝詞(のりと・宣言)の奏上や
玉串(たまぐし・神様に奉げる榊の枝)奉奠などの神事が終わると
本殿前にて『菅野の神楽』が奉納されます。
※獅子による1番最初の演目『岡崎』は神事の始まる前に行なわれていたようです。残り11演目が10時より2時間かけて行われます。
ちなみに、出演者の皆さんは全員地元の方のようで
約15人ほどが入れ替わりで演目を披露します。
菅野の神楽についてもう少し詳しく説明しますと
1665年に、尾張国(おわりのくに・現在の愛知県)より
この地にやって来た井戸掘り職人より伝えられた演舞(踊り)と
言われています
※当時、上山神社に婿にやって来た人物が、酒造りを始めるにあたり、井戸を掘らせる為に呼び寄せたそうです。
それから約300年以上もの間
地元の方に代々受け継がれ、筒川祭にて披露されるんですね。
※かつては全部で13演目あったそうですが、現在12演目が継承されています。
太鼓と笛によるお囃子が鳴り響く中
様々な演目が披露されました
『神楽』
獅子が、両手に鈴や御幣を持って登場し舞います。
『剣の舞』
剣を口に加えて獅子が舞います。
途中で剣を抜き取り威勢よく演舞します。
『花の舞』
『神楽』『剣の舞』『花の舞』までの様子はこちらからご覧ください。
『お染の舞』
獅子が再び立ち姿となり
左手に菅笠(すげがさ・竹や檜で作られた帽子)
右手に扇子を持ち『お染の唄』に併せて
舞を披露します
※お染の唄は、歌舞伎の題材にもなった『お染久松』に関する唄です。油屋の『お染』と、住み込みで働いていた『久松』の心中事件に基づくものです。
『玉の舞』
獅子が玉とじゃれあったり、口に咥えたりしながら
愛らしく舞います。
『天狗の舞』
天狗と獅子による演目です。
天狗役は子供が演じています。
かつては、こうした神楽を踊れる子供は嫡男(長男)だけ
という厳しい取り決めもあったそうですけれど
現在では、分け隔てなく参加出来るようになったみたいですよ
『お染の舞』『玉の舞』『天狗の舞』まではこちらの動画をご覧ください。
『法螺の舞』
『両剣の舞』
再び、立ち姿になった獅子は
両手に剣を持ち、勢いよく振り下ろしながら
しなやかに剣をさばきます。
『お亀女郎』
ひょっとこが、お亀を口説く演目です。
「床入りしようではないか~!」などの
ちょっと大胆な口上を読み上げながら、舞を踊ります。
こうしたユニークなものも入っているのも
面白いですね
ちなみに、ひょっとこが手にしているのは
『ささら』と呼ばれる楽器です。
ささらには、多くの種類があるそうですが
こちらは2本の木をすり合わせて鳴らす
『すりざさら』というものみたいですよ。
※ささらは、天狗の舞でも一部使われていましたよ~。
『法螺の舞』『両剣の舞』『お亀女郎』まではこちらの動画をご覧ください。
『和唐内』
数ある演目の中でも、見どころの1つと言えるのが
こちらの和唐内です。
和唐内とは、近松門左衛門の『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』という 歌舞伎の演目に登場する主人公の名前です
これは実在した『鄭 成功(ていせいこう)』を元に描かれたお話で
彼は中国人の父親と、日本人の母親をもつハーフであり
『日本(和)でも中国(唐)でもない(内)』という意味から
歌舞伎の中では『和唐内』と名付けられたようです。
※鄭 成功は『鄭氏政権』の祖と言われる人物で、1600年代後半、清によって滅ぼされようとしていた明を助け、台湾に亡命政権を作りました。彼は日本で生まれ、7歳にして中国へと渡ったそうですよ。
ちなみに、菅野の神楽が伝わったとされる
1665年には国性爺合戦(1715年)は上演されていないので
和唐内に関して『菅野の神楽』がこの地に伝わった後で
追加された演目である可能性が高いと言われています。
※同様にお染の舞のモチーフになった、お染と久松による心中事件も1710年に起こっていますので、これも後に加えられた演目であると考えられています。
ちなみに歌舞伎『国性爺合戦』では
和唐内が中国にて寅を退治などをするシーンがあるそうですよ
菅野の神楽の『和唐内』では
寅の代わりに獅子を生け捕りにするお話です。
主人から獅子の生け捕りを命じられた和唐内が
薬屋から妙薬を手に入れ、獅子をおびき出し
退治し、見事に生け捕りにするお話で
獅子の上に乗っての口上や独特の掛け声が見どころです。
※この和唐内と獅子の戦いは、様々な口上のバリエーションがあるようで、全国的な演目として広がっているそうですよ。
この後も演目は続き
『棒振り』
『小太刀』
『太刀振り』
が行なわれました。
子供からお年寄りの方までが
参加しての演目で、最後は締めくくられました
『和唐内』『棒振り』『小太刀』『太刀振り』までの動画はこちらからご覧ください。
そんな筒川祭が行なわれた上山神社の場所はコチラ↓
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