今回ご紹介するのは毎年1月16日に

上賀茂神社(かみがもじんじゃ)で行われている

武射神事

武射神事(むしゃしんじ)です


年始めに一年間の邪気を祓う神事

『鬼』と書かれた的を矢で射抜くんですよ

『鬼』と書かれた的

その昔は、宮中行事として

旧暦の1月15日に行っていたそうですけれど

明治以降、途絶えてしまいました


そこで上賀茂神社では、昭和10年頃より

この行事を継承し行っているんですね


武射神事

それでは早速、レポートしていきたいと思います


10時半頃、神職の方をはじめ

神事に参加する小笠原流(おがさわらりゅう)の方々が

境内に入って来られます


小笠原流は、鎌倉時代より続く弓の流派です。

弓を使った神事に度々参加され、中でも有名なのが

下鴨神社(しもがもじんじゃ)の流鏑馬神事(やぶさめしんじ)です

※詳しくは流鏑馬神事 2011(下鴨神社)の記事をご覧下さい。


本殿へ向かう小笠原流


まずは、土舎(つちのや)でお祓いをして

その後、本殿へと入ります。

中では祝詞(のりと)の奏上(そうじょう)が行われます


また、上賀茂神社境内にある多数の摂社や末社に

遥拝(ようはい)をするんですね~

※遥拝とは、遠く離れた場所から拝む事です。


射場へ向かう小笠原流


そして、二ノ鳥居をくぐり射場へと移動します。


射場

ではここで、武射神事の流れについて

簡単にご説明させていただきますと・・・


大きく分けて3つの事が行われるんですね~


・蟇目(ひきめ)の儀

音の鳴る蟇目鏑(ひきめかぶら)を矢の先端に取り付け、弓を引き、天地四方の邪気を払います。


・大的式(おおまとしき)

裏に『鬼』と書かれた的を、朱塗りの『丹塗矢(にぬりや)』を使い、打ち抜きます。


・百手式(ももてしき)

前弓(まえゆみ・6人)、中弓(なかゆみ・7人)、後弓(あとゆみ・6人)に分かれて的を狙い、弓を引きます。こちらも同様に、お祓いの意味があります。


蟇目の儀

射場のお祓いが済んだ後

最初に蟇目の儀が行われ

2人の射手が登場します。


矢の先端には朱色の蟇目鏑(ひきめかぶら)が

取り付けられています

蟇目鏑は、中が空洞になっていて

ここを空気が通る事によって「ポォーーーー」と

音が鳴るんですね


形が蟇蛙(ひきがえる)に似ていることや

木を挽き、削って作ることなどから

蟇目鏑という名が付いたといわれています。

※木を挽くとは、木を縦向きに、繊維に沿って切ることです。


これを付けて矢を飛ばし、独特の音を鳴らして

邪気を退散させます

※平家物語にも、蟇目鏑の付いた矢を使ったお祓いの記述が出てくるそうです。歴史ある作法なんですね。


大的式


続いて大的式が行われます。

約40メートル離れた的に向かって矢を放ちます


この時にと書かれた的が用意され

射手がそれを打ち抜きます。

ちなみに、大的式に使用される丹塗矢

賀茂社(上賀茂神社下鴨神社)に

大変ゆかりのある矢なんですよね


何故かと言いますと、下鴨神社のご祭神である

玉依姫命(たまよりひめのみこと)が

ならの小川から流れてきた

丹塗矢を持ち帰った事がきっかけで

上賀茂神社のご祭神である賀茂別雷神

(かもわけいかずちのかみ)を

お腹に宿し、産んだといわれているからなんですよ


こういった理由から

上賀茂神社で行われる大的式では

丹塗矢が使われているそうです。


上賀茂神社の宮司さんを始め

神職の方々5人により、2本ずつ弓が引かれましたっ


では、ここまでの模様を動画でどうぞ!


百手式

そして最後にご紹介するのが

『百手式』です。

※百手式という名前は、10人の射手が10本の矢を射つところから名付けられました。


今回の武射神事では

合計16人の射手がそれぞれ2本ずつ、矢を放ちます。

前弓、中弓、後弓といったグループが順番で登場し

それぞれ横一列になり、順に弓を引いていきます。


蟇目の儀や、大的式もそうですけど

ただ弓を引くだけでなく

細やかな作法(所作)がたくさんあるのも武射神事

見所の1つです。


例えば

『前紐捌き(まえひもさばき)』と呼ばれる着物の紐をほどく作法

片腕を着物から出す作法

そして、弓や矢の持ち方や扱い方にいたるまで

細やかな動きが決められています


これらの作法を、小笠原流の皆さんは

動きを揃えて、息もぴったりに行います。

弓を引く前から、見応えはたっぷりなんですよっ!


この他にも

それぞれが持っている『弓』にも特徴があります。

何人かの人は、色や模様が違いますよね?


百手式

こちらは後弓の方達ですが

向かって一番左手の方が持っているのは

重藤弓(しげとうのゆみ)と言います。

弓を握る下の部分に28、上に36の『藤』が巻きつけられています。


28は『二十八宿(にじゅうはっしゅく・星座を28のエリアに分ける考え。中国の占星術で用いられ、日本にも影響を与えました。)』を表し

36は『三十六禽(さんじゅうろっきん・36の獣の事であり、十二支を更に3分割にした時間別の守り神で、陰陽道などにも取り入れられている。)』

を表現しているそうで

天と地を象った弓と言われています。


この他にも

3・7・5の順番で藤が巻かれている弓を『相位弓(そういきゅう)』と言い

位の高い人が使う弓なんだそうです。


作法に加え

弓の種類も分かるようになれば

また一段と、見所は増えますよねっ


こうして、12時過ぎまで百手式が行われ

武射神事は終了です


武射神事

最後に、神事に参加された方はお神酒を飲み

記念撮影をしていましたよっ。


そんな武射神事が行われた上賀茂神社の場所はコチラ↓


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