メモ2013-12-09
テーマ:その他
関連:百人一首に登場する名所 その1 / 百人一首に登場する名所 その2 / 

百人一首に登場する名所 その3

今回ご紹介するのは、百人一首に登場する京都の名所です。

鎌倉時代初期の歌人で公家の

藤原定家(ふじわらのていか)が選定した『百人一首』にまつわる

京都の名所をご紹介したいと思います


・天津風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿 しばしとどめむ(12番)

これを歌ったのは

僧正遍照(そうじょうへんじょう)という、平安時代初期の僧です。


彼が詠んだこの歌は

宮中(京都御所)で行われた新嘗祭(にいなめさい・収穫祭)の

最終日に行われる『五節の舞』について書かれたものなんですよ。


この時、舞姫(天女)たちによる演舞を見た際に

綴ったと言われています


京都御所

こちらはかつて宮中が置かれていた京都御所です。門の奥には紫宸殿(ししんでん・正殿)が見えます。


ちなみに天津風(あまつかぜ)とは

天から吹く風の事を指すんですよ。


では早速、訳してみましょう!


天から吹く風よ。

天女たちの舞があまりにも美しいので

しばしの間、この場に留めておきたいのだ。

だから、天上界に帰る雲の道を閉ざしておいてくれ。


素敵に舞う天女たちを前にした

率直な気持ちが表れていますね~っ。


この歌で詠まれる天女とは

小さい女の子の巫女だったようですよ。


ちなみに

僧正遍照とは良峰宗貞(よしみねのむねさだ) の出家後の名前です。

良峰宗貞という名前を聞いてピンときた方もいるかもしれませんが

彼は小野小町に恋をした

深草少将(ふかくさしょうしょう・深草に住む少将)の

モデルになった人物だと言われているんですよ。

※『少将』とは官位を指す言葉です。


深草少将が小野小町のもとに100日間通いつめる

『百夜通い(ももよがよい)』のお話は、能の演目にもなっています。

※百夜通いについて詳しくは欣浄寺(ごんじょうじ)の記事をご覧ください。


・朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木(64番)

これを詠んだ権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)は

平安時代中期の歌人で藤原定頼の事です。


ちなみに彼の父親である藤原公任(ふじわらのきんとう)の歌も

百人一首に収録されています。

※藤原公任が詠んだ歌に関しては、百人一首に登場する名所 その2の記事をご覧下さい。


さて、こちらの歌は

早朝の宇治川の情景を詠んだものなんですね。


宇治(京都府の南部)は源氏物語の舞台にもなっていて

当時、多くの公家が住んでいたと思われます


宇治橋

こちらは宇治川に架かる宇治橋です。


歌に出てくる『網代木(あじろぎ)』とは

宇治川の伝統的な漁法に用いた『杭』の事です。


秋から冬にかけて、琵琶湖で生まれた稚魚が

宇治川を下る際に、このあたりで漁業が行われたようで

網の代わりに網代木を何本も使い

川の端から端までV字になるように立て

その先端に魚を集めて網ですくって獲っていたそうです


では早速、訳してみましょう!


夜も徐々に明けてきました。

宇治川にかかる霧も晴れていき

その隙間から、浅瀬(瀬々)に打たれた網代木が

所々見え隠れしています。


という感じでしょうか。

ちなみに、この『網代木』は通りの名前にも使われていて

現在、宇治川沿いを通る、およそ400メートルの

散策道の名前(あじろぎの道)にもなっています。


・心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな(68番)

これを詠んだのは三条院こと

第67代天皇の『三条天皇』です。


この歌は、宮中(京都御所)にて詠まれたもので

当時の悲しい心境を綴った歌だと言われています。

彼は、天皇になったものの

藤原道長(ふじわらのみちなが)の

圧力によって退位を迫られたと言います


当時、藤原氏の権力が強く

彼らの都合で天皇の即位や退位が行われていたようです


ちなみに、前の天皇である一条天皇は

藤原兼家(ふじわらのかねいえ)の策略により即位したそうですよ。

※一条天皇や藤原兼家について詳しくは、法雲寺の記事をご覧下さい。


平等院

世界遺産にもなっている平等院は、藤原道長の宇治殿を息子の頼通(よりみち)が寺院として創建しました。


藤原道長は、三条天皇が病弱であり、眼病をわずらっていた事から

退位を迫ったと言います。


しかし、その裏には

自分の娘『藤原彰子(ふじわらのしょうし)』と

一条院(一条天皇)との間に出来た息子を

早く即位させ、外祖父(がいそふ)となって

権力を掌握したかったんでしょうね。

※外祖父については、白河天皇陵(成菩提院陵)の記事をご覧下さい。


前置きが長くなりましたが

早速、訳してみましょう!


本意ではないが

こんな辛い世の中でも、自分は生きながらえていくのなら

今夜の綺麗な月の事を、恋しく思い出すだろう。


目も徐々に見えなくなり、綺麗な月も今夜が最後かもしれない。

そんな中、退位も迫られ・・・絶望の中にいる

三条天皇の心情が、悲しく心に響きますね


・風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける(98番)

これを詠んだのは従二位家隆(じゅにいいえたか)こと

鎌倉時代初期の歌人・藤原家隆です


ならの小川

歌の中に登場する『ならの小川』とは

上賀茂神社の境内を流れる川の事なんですよ。


では早速、訳してみましょう!


楢(なら)の葉が、風でそよぐ夕暮れは秋の気配を感じますね。

しかし、ならの小川で行われる

6月の禊(みそぎ・罪や穢れを水で清める事)を見ると

まだまだ夏なんだなと思い知らされるのです。

※楢の木はブナ科の落葉樹です。


ちなみに、この『6月の禊』とは

上賀茂神社で行われている

『夏越の大祓(なごしのおおはらえ)』の事です


この夏越の大祓は

1月~6月までに身に付いた穢れを祓う神事で

夏越の大祓

ならの小川に、穢れをうつした人形(ひとがた)を流すんですよ

夏越の祓については夏越の大祓 2012(上賀茂神社)の記事を

ご覧下さいっ!


という事で、今回は百人一首に登場する名所を

ご紹介させていただきました。


場所はコチラ↓


より大きな地図で 百人一首に登場する名所 その3 を表示


1 ■勉強になりました。

最近、百人一首に興味を覚えた、東京住まいのオジサンです。
主様の記事は写真も多くて見やすく、また歌の解説も時代背景がきちんと書かれており、大変勉強になります。
今度関西に行く時は、是非百人一首ゆかりの地を巡る旅をしたいと思います。

今後のさらなる充実、期待しております。
またお邪魔させてください。

永遠の青年さん 2019-12-24 21:42:19


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