今回ご紹介するのは、百人一首に登場する京都の名所です


鎌倉時代初期の歌人で公家・藤原定家(ふじわらのていか)が

選定した百人一首には

平安時代に詠まれた歌が数多く収録されています。


その中から、歌にまつわる京都の名所をご紹介したいと思います!


・みかの原 わきて流るる 泉川 いつ見きとてか 恋しかるらむ(27番)

これを詠んだ中納言兼輔(ちゅうなごんかねすけ)とは、藤原兼輔という

平安時代中期の歌人です。


彼が泉川(いづみがわ・現在の木津川)を見た際に

こちらの歌を詠んだと言われています。


木津川

木津川は、京都府南部を流れる川です。この川は三重県まで繋がっているそうですよ。


では早速、訳してみましょう!


みかの原に湧き出る泉川よ。その名のように

私はあなたの事を「いつ見た」というのでしょう?

まだ一度もお会いした事がないのに・・恋しく思っています。


みかの原(瓶原)とは、京都府南部にある

木津川市加茂町(きづがわしかもちょう)に残る地名で

かつて恭仁京(くにきょう・くにのみやこ)と呼ばれる

都が一時的に置かれた場所でもあります


一度も会った事の無い女性に恋するってどういう事?

と思われるかもしれませんが

その昔、貴族たちは、お互いの顔も知らず

和歌を交換し合っていたと言います


今でいうメル友みたいな感じでしょうか?

そして、顔も知らない人が詠んだ歌から

その人の顔や姿を想像していました


藤原兼輔も、この時、素敵な歌を詠む女性に

恋していたという事なのでしょう


・八重葎 しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり(47番)

平安時代中期の僧・恵慶法師(えぎょうほうし)が詠んだ歌で

源融(みなもとのとおる)の邸宅だった『河原院(かわらのいん)』にて

綴った和歌だと言われています。


ちなみに、八重葎(やえむぐら)とは

幾重にも重なって生い茂る雑草といった意味なんですよ。


では早速、訳してみましょう!


雑草が生い茂った屋敷はさびしく

もう人が訪ねて来る事はないが

それでも秋はやって来るのですね


かつては立派だった河原院も、主を失い

見事な庭園も、もはや見る影もなかった。

恵慶法師が訪れた際には、そのような状態だったんでしょう。


それでも、季節は変わりなく訪れ

紅葉の美しさとは対照的だったんでしょうね。

※現在、河原院は無く、跡地を示す石碑のみが建てられています。


渉成園

ちなみに、河原院にあった庭園の趣向を

取り入れて作庭されたのが

渉成園(しょうせいえん)だと言われています。


江戸時代初期に、家康の家臣であった石川丈山(いしかわじょうざん)の手によって

作られたそうですよ

※詳しくは渉成園の記事をご覧下さい。


・御垣守 衛士の焚く火の 夜は燃え 昼は消えつつ ものをこそ思へ(49番)

さて、こちらの歌に登場する

御垣守(みかきもり)とは・・・

宮中(御所)の門を守衛する衛士(えじ・兵士)の事です。


京都御所

こちらはかつて宮中のあった京都御所です。門の奥には紫宸殿(ししんでん・正殿)が見えます。


ちなみに、これを詠んだのは

大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)という

平安時代中期の貴族です。


彼が詠んだ歌にはどういった意味があるのでしょうか。

早速、訳してみましょう!


昼間は消えている恋の炎も

夜は、宮中を護衛する衛士が焚く『かがり火』のように燃え上がり

もの思いにふけるばかりです


つまり、夜一人になると

あの人の事を考えちゃう・・・そんな気持ちを

夜にだけ焚かれる『かがり火』に重ね合わせている

という事なんですね


恋を、燃え上がる炎に例えているんですけど

この表現って今でも使いますよね。

1000年以上も前から使われていたのに驚きです!


・滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ(55番)

こちらは大納言公任(だいなごんきんとう)こと

平安時代中期の歌人・藤原公任が詠んだ歌です。


当サイトでも、何度か取り上げているこちらの歌ですが

かつてあった滝を想い、藤原公任が綴ったものなんですね。


では早速、訳してみましょう!


滝を流れる水の音が聞こえなくなってから

もうずいぶんと時が流れてしまいましたね・・

ですが、その名声だけは人々に絶えず流れています。


藤原公任は、かつてあったと言われる滝を前に

この歌を詠んだんですね

ちなみに、その滝とは、名古曽滝(なこそのたき)と呼ばれる滝で

嵯峨天皇(第52代天皇)の離宮であった嵯峨院にあったそうです。


名古曽滝趾

嵯峨天皇が崩御した後、嵯峨院は大覚寺(だいかくじ)に改められ

現在、境内には名古曽滝趾として石碑が建っています。


ちなみに、名古曽滝という名前は

藤原公任が詠んだ、この歌から名前が付けられたそうですよ

※詳しくは名古曽滝趾の記事をご覧下さい。


という事で、今回は百人一首に登場する名所を

ご紹介させていただきました。

場所はコチラ↓


より大きな地図で 百人一首に登場する名所 その2 を表示

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